作:沢 美二  Sawa Yoshiji

男同士、女同士

 ファミレスの席で周囲の人をうかがうと、相手を気遣いながら話をしているのは、女性の二人連れ、あるいは女子グループなど、女性客が多いような気がする。ドリンクバーの飲み物を前に、お互いに話したり聞き入ったり、という具合だ。女子高生二人から高齢のご婦人方まで、その年齢層は幅広い。

 その一方で男性はというと、お酒が飲める席を除くと、男同士、とくに中高年ではそんな場面をほとんど目にしない気がする(十代や20代前半の男子でいえば、スマホをみんなでいじっている印象……)。

 私にも、30代前半まではそんな男同士の意見交換ができる友人関係があった。しかし男というのは(女性にもそういう人がいるのかもしれないが)、年齢が上がるにつれて人の話を聞かなくなるようだ。たまに話す機会があっても、多くは仕事や趣味の話の一方通行で、ずっと聞いていると結局、「オレは今も絶好調なのさ!」という自慢話だったりする。あるいは逆に、とにかく聞いてくれ! とばかりにグチのオンパレードだったり――。

 ”こっちも聞いてほしい話があるんだけど……”と軽い欲求不満になりつつ、機会を得ようと口を開いても、すぐに自分の話題に戻されてしまう……。

 昔から、自分はどちらかというと話すより聞くのが好きだった。自分の話というのは、つまりは自分の知っていることなので広がりがない。他人の話には発見がある可能性がある。

 とはいえ、一方的に”オレの日常や手柄”を聞かされてもなあ……。

 人によっては自分のことを他人に話して、自分の現状(これまでの実績や現在の悩み等)を改めて再認識しているようだ。自分を安心させているのかもしれない。つまり自慢話に聞こえても、実はそうでもないのだろう。

 対面での会話は、双方向に深く情報交換できるせっかくの機会なのに、男性の多くはそれを忘れているような気がする。「話し上手は聞き上手」の諺のとおり、最低でもフィフティ・フィフティ(話す=5、聞く=5)を忘れないようにしたいものだ。

 ま、これは老若男女問わず、当てはまることなのかもしれないが……。

(ちなみに、セールスでは聞く=8、話す=2で相手を主役にすると好印象を持たれるとのこと。会社の飲み会では、上司=8、部下=2だったりするので、これを逆にすると、部下から好かれる上司になれるのかもしれない。)

出版社 沢文庫「小説他 by 沢美二」Novels and others published by Yoshiji Sawa's SAWA BUNKO

沢文庫にお立ちよりいただきまして、ありがとうございます。Thank you for your coming.